- BtoB卸・D2C直販・仕入れサイト。目的(効率化かブランド訴求か)に合う参入形態の選び方
- 価格設定や商品選定。既存の代理店・卸売業者と衝突せず共存するための4つの必須条件
- 反発を防いでスムーズに移行!社内営業部門への配慮と、段階的にEC化を進める3つのフェーズ
目次
メーカーのEC参入は、まず既存卸と競合しない販路設計から始める
メーカーがECに参入する際は、ECサイトの構築よりも先に、既存卸や代理店と競合しない設計を決めることが重要です。価格や販売先のルールが曖昧なまま始めると、販路拡大のはずが既存取引先との関係悪化につながるおそれがあります。
特にメーカーの場合、ECは新しい販売チャネルであると同時に、既存商流に影響を与える存在です。誰に、どの商品を、どの条件で販売するのかを整理してから始める必要があります。
主なEC参入の形は、次の3つです。
- BtoB卸EC
- D2C直販EC
- 卸売モール・仕入れサイトへの出店
それぞれ役割が異なるため、自社の目的に合わせて選ぶことが大切です。

BtoB卸ECが向くのは、既存取引先の発注効率化と法人販路の拡大を狙う場合
BtoB卸ECは、既存の卸先・小売店・法人顧客からの注文をオンライン化したいメーカーに向いています。電話やFAX、メールで受けていた注文をECに置き換えることで、受注処理の負担を減らしやすくなります。
また、法人会員制にすれば、一般消費者には価格を見せず、取引先ごとに商品や掛率を出し分けることも可能です。既存の取引条件を守りながらEC化したい場合は、BtoB卸ECを軸に考えるのが現実的です。
D2C直販ECが向くのは、ブランド訴求や顧客データの取得を重視する場合
D2C直販ECは、メーカーが消費者に直接販売する形です。ブランドの世界観を伝えたい、購入者データを集めたい、消費者の反応を商品開発に活かしたい場合に向いています。
一方で、既存の小売店や代理店と販売先が重なりやすい点には注意が必要です。同じ商品を同じ価格帯で販売すると、取引先から「メーカーが競合になった」と受け取られる可能性があります。
D2Cを始める場合は、EC限定商品、セット商品、定期購入商品など、既存販路と違う見せ方を検討しておきましょう。
卸売モール・仕入れサイトが向くのは、早く新規法人との接点を作りたい場合
卸売モールや仕入れサイトへの出店は、自社で集客基盤を作る前に、新規法人との接点を増やしたい場合に向いています。すでに仕入れ目的のユーザーが集まっているため、自社ECより早く反応を得られることがあります。
ただし、モール内では競合商品と比較されやすく、価格競争に巻き込まれる可能性もあります。商品力やブランド訴求よりも、まず販売機会を増やしたい段階で選ぶとよいでしょう。
販路拡大を狙うなら、既存取引先向けECと新規開拓向けECを分けて考える
メーカーがECで販路を広げるには、既存取引先向けと新規開拓向けを分けて設計する必要があります。同じECでも、目的が違えば必要な機能や見せ方も変わります。
既存取引先向けのECは、発注しやすさや業務効率化が重視されます。一方、新規開拓向けのECでは、商品情報のわかりやすさ、問い合わせ導線、取引開始までの流れが重要です。
目的別に整理すると、次のようになります。
- 既存取引先向け:発注業務の効率化、リピート注文の促進
- 新規法人向け:商品認知、問い合わせ獲得、取引開始
- 代理店向け:営業支援、商品情報共有、販促素材提供
- 一般消費者向け:ブランド訴求、購入体験、顧客データ取得
この区分を曖昧にしたままECを始めると、価格表示や販売条件で迷いやすくなります。

既存取引先向けはクローズドECで効率化する
既存取引先向けには、ログイン後に価格や商品を表示するクローズドECが適しています。取引先ごとに掛率、表示商品、送料、支払い条件を変えられるため、既存の商流を守りながらオンライン化できます。
特に卸売りでは、同じ商品でも取引先によって価格やロットが異なることがあります。一般公開型のECだけで対応しようとすると、既存取引先との条件差が見えすぎてしまうため注意が必要です。
新規開拓向けはオープンECで問い合わせ導線を作る
新規法人を獲得したい場合は、商品情報の一部を公開し、問い合わせや会員登録につなげる設計が有効です。すべての価格を公開する必要はありません。
たとえば、商品特徴、利用シーン、導入条件、最小ロット、取引開始までの流れを見せたうえで、価格は会員登録後に表示する方法があります。これにより、既存卸への配慮と新規開拓の両方を取りやすくなります。
代理店・卸との共存にはルール設計が欠かせない
代理店や卸と共存するには、ECで何を販売し、何を既存チャネルに残すのかを事前に決める必要があります。ルールがないまま販売を始めると、社内外で判断がぶれます。
決めておきたい主な条件は、次のとおりです。
- ECで販売する商品カテゴリ
- 既存卸に任せる商品カテゴリ
- EC限定商品やセット商品の有無
- 法人会員制にするかどうか
- 価格の表示範囲
- 代理店の販売エリアとの関係
- 問い合わせが来た場合の営業引き継ぎルール
この整理ができていれば、ECを「既存チャネルを奪うもの」ではなく、「新しい顧客接点を作るもの」として位置づけやすくなります。
参入前に決めるべき条件は価格・商品・取引先・運用の4つ
メーカーが卸売りECを始める前に決めるべき条件は、価格、商品、取引先、運用の4つです。この4つが曖昧なままだと、サイト公開後に価格調整や社内調整が増え、EC運用が止まりやすくなります。
ECサイトはあとから修正できますが、取引条件の混乱は簡単には戻せません。特にメーカーの場合、価格設計を誤ると既存卸や代理店との信頼関係に影響します。

価格は既存卸価格とEC上の見せ方を分けて設計する
価格は、既存卸価格とEC上の見せ方を分けて考えることが大切です。単純にECだけ安く見せると、既存卸や代理店から反発を受けやすくなります。
現場回答でも、支援先メーカーでは社名を出さない形で、価格そのものは既存チャネルと同じにしながら、おまけ・ポイント・クーポンで差を見せる設計が有効でした。価格を直接下げるのではなく、購入体験や特典でECの価値を出す方法です。
価格設計では、次のような選択肢があります。
- 価格は既存卸と同じにする
- EC限定のおまけを付ける
- ポイントで次回購入を促す
- クーポンで初回購入のハードルを下げる
- セット商品や限定パッケージで比較されにくくする
値引きだけでECの魅力を作ると、チャネル間の価格差が問題になりやすくなります。既存卸と共存するなら、価格ではなく条件や体験で差を作る視点が必要です。

商品は全商品ではなくEC向きの商品から始める
卸売りECでは、最初から全商品を掲載する必要はありません。むしろ、商品数を広げすぎると、商品情報の整備や在庫管理が追いつかなくなることがあります。
最初に選ぶべきなのは、EC上で説明しやすく、リピート注文につながりやすい商品です。仕様が複雑すぎる商品や、個別見積もりが前提の商品は、初期段階では問い合わせ負担が残りやすいでしょう。
EC向きの商品は、次の条件で選びます。
- リピート購入されやすい
- 商品仕様をページ上で説明しやすい
- 小口注文に対応しやすい
- 在庫管理しやすい
- 既存卸との価格比較が起きにくい
- セット販売や限定販売に展開しやすい
まずは売れ筋商品や定番商品に絞り、受注の流れが安定してから掲載商品を増やす方が安全です。
メーカーECに向いている商品チェックリスト
メーカーがEC参入を検討する際は、まず自社商品の中でECに向いている商品を選ぶことが重要です。以下の項目に当てはまる商品から始めると、販売開始後の運用が安定しやすくなります。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| リピート性がある | 一度購入した法人・店舗が継続的に発注しやすい商品か |
| 仕様が説明しやすい | ページ上の画像や文章で購入判断しやすい商品か |
| 小口出荷しやすい | 1個単位・少量単位で梱包、出荷しやすい商品か |
| 破損リスクが低い | 通常の梱包で安全に配送しやすい商品か |
| 在庫管理しやすい | SKU数、賞味期限、ロット管理が複雑すぎないか |
| 既存卸と比較されにくい | セット商品、限定商品、おまけなどでEC独自の見せ方ができるか |
| 問い合わせなしで購入しやすい | 価格、ロット、納期、用途が明確で、個別説明が少なくて済むか |
すべての商品を最初からEC化する必要はありません。まずは、リピート性があり、説明しやすく、出荷しやすい商品から小さく始めることで、既存卸との衝突や社内運用の混乱を抑えやすくなります。
取引先は会員制・審査制・公開制を使い分ける
メーカーのECでは、誰に何を見せるかを設計することが重要です。すべての情報を公開すると、既存卸価格や法人条件が外部に見えすぎる可能性があります。
BtoB向けであれば、会員制や審査制を組み合わせるのが現実的です。一般公開ページでは商品概要や導入メリットを見せ、価格や取引条件はログイン後に表示する形です。
取引先の見せ方は、次のように分けられます。
- 一般公開:商品概要、特徴、利用シーン
- 会員登録後:卸価格、在庫、ロット、納期
- 審査通過後:掛率、取引条件、請求書払い
- 既存取引先のみ:個別価格、専用商品、過去注文履歴
この設計により、新規顧客には入口を開きつつ、既存取引先の条件は守りやすくなります。
運用は営業・受注・物流・在庫管理の担当範囲を決める
ECは公開して終わりではありません。受注後の処理、問い合わせ対応、出荷、在庫反映、営業フォローまで運用が続きます。
メーカーのEC化で起きやすいのは、EC担当だけでは判断できない業務が多く、結局営業や受注部門に確認が戻る状態です。これでは、EC化しても現場負荷はあまり下がりません。
参入前に決めておきたい担当範囲は、次のとおりです。
- 商品登録を誰が行うか
- 価格変更を誰が承認するか
- 受注処理を誰が見るか
- 在庫情報をどのシステムと連携するか
- 問い合わせを営業に引き継ぐ条件
- 既存取引先からの注文をECに移行する方法
運用設計ができていれば、ECが営業や受注部門の負担を増やすのではなく、業務を支える仕組みとして機能します。
メーカーECでは販売開始後の業務量も確認する
メーカーECでは、サイトを公開した後に発生する業務量も事前に確認しておく必要があります。特に小口注文や新規法人からの注文が増えると、営業・受注・物流・経理の各部門に細かな作業が発生します。
| 業務 | 発生しやすい作業 | 負担が増えやすい理由 |
|---|---|---|
| 商品登録 | 画像、仕様、価格、ロット、納期、在庫情報の整備 | 商品数やSKU数が多いほど情報整備に時間がかかる |
| 受注処理 | 注文確認、支払い確認、出荷指示、納期連絡 | 電話・FAX注文とEC注文が混在すると処理が複雑になる |
| 在庫管理 | 在庫更新、欠品時の連絡、複数倉庫との調整 | 在庫情報がずれると納期トラブルにつながる |
| 出荷作業 | ピッキング、梱包、送り状発行、発送通知 | 小口注文が増えると、ケース出荷より作業が細かくなる |
| 顧客対応 | 問い合わせ対応、返品・交換、配送状況確認 | 商品情報や納期情報が不足していると問い合わせが増える |
このように、メーカーECは「サイトを作ること」よりも、販売開始後に受注・在庫・出荷を回し続けることが重要です。社内にEC担当者や出荷対応の余力がない場合は、販売代行や物流代行を組み合わせることで、無理なく始めやすくなります。
メーカーの卸売りEC立ち上げ時のポイント
メーカーの卸売りECは、最初から大規模に作るより、リピート注文と小口法人対応に絞って始める方が現実的です。初期段階で重要なのは、商品数の多さではなく、注文しやすい状態を作ることです。
EC化の目的が販路拡大であっても、最初から広く売ろうとすると運用負荷が高くなります。まずは取引が発生しやすい商品と顧客に絞り、受注から出荷までの流れを安定させましょう。
売れ筋SKUから始める
最初に掲載する商品は、売れ筋SKUに絞るのが有効です。SKUとは、色・サイズ・容量などを含めた在庫管理上の商品単位を指します。
全商品を掲載しようとすると、画像、仕様、価格、在庫、ロット、納期などの情報整備に時間がかかります。まずは定番商品やリピート率の高い商品から始めた方が、早く検証できます。
初期掲載に向いている商品は、次のようなものです。
- 既存取引先からの注文頻度が高い
- 仕様説明が比較的シンプル
- 欠品リスクが低い
- 小口注文に対応できる
- セット販売しやすい
- 問い合わせなしで購入判断しやすい
商品数を増やすより、1商品あたりの情報を充実させる方が、初期の受注にはつながりやすくなります。
EC向け商品は「売れそうか」だけでなく「出荷しやすいか」も見る
メーカーがEC参入時に商品を選ぶ際は、売れ筋かどうかだけでなく、物流面で扱いやすいかも確認しておく必要があります。
たとえば、ECで扱いやすい商品には次のような特徴があります。
- サイズが大きすぎず、標準的な配送サイズに収まりやすい
- 破損リスクが低く、特殊な梱包が不要
- 賞味期限・使用期限の管理が複雑すぎない
- SKU数が多すぎず、在庫管理しやすい
- 1個単位・少量単位で出荷しやすい
- 返品・交換時の状態確認がしやすい
逆に、サイズが大きい商品、破損しやすい商品、SKUが細かく分かれすぎている商品は、ECで販売できても物流コストや作業負担が大きくなる場合があります。最初は「売れそうな商品」だけでなく、「安定して出荷できる商品」から始めると運用が安定しやすくなります。
リピート注文導線を整える
卸売りECでは、新規注文だけでなく、リピート注文のしやすさが重要です。法人顧客は一度購入した商品を継続的に発注することが多いため、再注文の手間を減らすだけでも利用率が上がりやすくなります。
特に既存取引先向けのECでは、商品を探す手間を減らす設計が求められます。毎回検索するのではなく、過去の注文履歴や定番商品からすぐに発注できる状態が理想です。
優先したい機能は、次のとおりです。
- 注文履歴からの再注文
- お気に入り商品登録
- 定番商品の一覧化
- 見積り履歴の確認
- 納期や在庫の確認
- 複数商品の一括注文
取引先が「電話やFAXより楽」と感じるかどうかが、EC利用の定着を左右します。
営業担当が使える機能を入れる
メーカーのECは、営業担当と切り離して考えない方がよいでしょう。営業がECを使える状態になれば、単なる受注サイトではなく営業支援ツールとして活用できます。
たとえば、営業担当が取引先の代わりに注文を登録できる機能や、見積りを作成できる機能があると、既存の営業活動にECを組み込みやすくなります。
営業担当向けにあると便利な機能は、次のとおりです。
- 代理注文
- 見積り作成
- 取引先別価格の確認
- 商品資料の共有
- 注文履歴の確認
- 休眠顧客の抽出
営業部門がECを「自分たちの仕事を奪うもの」と捉えると、社内協力は進みにくくなります。営業の提案活動を支える仕組みとして設計することが大切です。
メーカーの卸売りEC成功のポイント
卸売りECの成功は、サイトを公開したかどうかではなく、取引先が使い続けるかどうかで決まります。取引先にとって便利でなければ、結局FAXや電話注文に戻ってしまいます。
メーカー側では効率化できると思っていても、取引先側にメリットが伝わっていなければ利用は進みません。移行時には、取引先にとって何が楽になるのかを具体的に示す必要があります。
既存取引先には移行メリットを先に伝える
既存取引先にEC利用を促す際は、メーカー側の都合ではなく、取引先側のメリットを伝えることが重要です。「今後はECでお願いします」だけでは、手間が増えたように受け取られることがあります。
伝えるべきメリットは、次のようなものです。
- 24時間いつでも発注できる
- 過去の注文履歴から再注文できる
- 聞き間違いや入力ミスが減る
- 納期や在庫を確認しやすい
- 定番商品を探しやすい
- 発注書を作る手間が減る
取引先が「これなら今までより楽だ」と感じれば、ECへの移行は進みやすくなります。
初回発注は営業や受注担当が補助する
ECへの移行では、初回発注のサポートが重要です。マニュアルを渡すだけでは、取引先が後回しにしてしまうことがあります。
特に長年FAXや電話で発注してきた取引先ほど、最初の一度を乗り越える支援が必要です。営業担当や受注担当が一緒にログインし、注文完了まで案内するだけでも、次回以降の利用につながります。
初回発注で補助したい内容は、次のとおりです。
- ログイン方法
- 商品検索の方法
- 注文履歴の確認方法
- 再注文の方法
- 支払い条件の確認方法
- 問い合わせ先の案内
EC化は、取引先の行動を変える取り組みでもあります。機能を用意するだけでなく、使い始めるきっかけを作ることが欠かせません。
社内KPIは売上だけでなく業務削減も見る
卸売りECの成果は、売上だけで判断しない方がよいでしょう。既存取引先向けのECでは、受注処理の削減や問い合わせ削減も重要な成果です。
初期段階では、大きな売上増加よりも、業務効率化の効果が先に出ることがあります。受注入力の時間が減った、注文ミスが減った、問い合わせ内容が変わったといった変化も見るべきです。
確認したいKPIは、次のとおりです。
- EC経由の注文件数
- リピート注文率
- 受注入力時間
- 電話・FAX注文の件数
- 問い合わせ件数
- 注文ミスの件数
- 休眠顧客からの再注文数
現時点では具体的な成果数値が確認できていないため、実績としての数値表現は入れていません。公開前に事例数値が確認できれば、このセクションに追記すると説得力が高まります。
メーカーがEC参入で失敗しやすい4つのポイント
メーカーのEC参入で失敗しやすいのは、既存卸への配慮と社内運用の設計を後回しにした場合です。ECサイト自体は作れても、価格・商流・社内役割が曖昧だと運用段階で止まりやすくなります。
特に注意したい失敗は、次の4つです。
- EC価格が既存卸価格とぶつかる
- 営業部門がECを競合チャネルと捉える
- 商品情報が不足して問い合わせが減らない
- 物流・在庫連携が弱く納期トラブルが起きる
この4つは、サイト公開後ではなく、参入前に対策しておくべき論点です。

価格公開で既存卸から反発される
価格公開は、メーカーECで最も慎重に扱うべきポイントです。EC上の価格が既存卸の仕入れ条件や販売価格と矛盾すると、既存取引先から不満が出る可能性があります。
そのため、価格を安く見せるのではなく、価格は同じにしながら、おまけ・ポイント・クーポンで差を見せる方法が有効です。実際に、社名を出さない支援先メーカーでも、この設計によって既存卸との衝突を避けながらECの利用メリットを作る形が取られていました。
価格で差をつける前に、次のような代替策を検討しましょう。
- EC限定のおまけを付ける
- 次回購入に使えるポイントを付与する
- 初回購入クーポンを配布する
- セット商品で比較されにくくする
- 既存卸と同じ価格で利便性を訴求する
価格を下げることだけがECの強みではありません。既存チャネルと共存するなら、特典や利便性で差を作る方が安全です。
営業部門がECを競合チャネルと捉える
社内の営業部門がECを競合チャネルと捉えると、導入後の活用が進みにくくなります。営業担当から見ると、ECが自分たちの売上や顧客接点を奪うように見えることがあるためです。
この状態を避けるには、ECの役割を明確にする必要があります。たとえば、定番商品のリピート注文はECで受け、営業担当は新規提案や重点顧客へのフォローに時間を使う、といった整理です。
営業部門との棲み分けでは、次の点を決めておきましょう。
- EC経由の売上を営業評価に含めるか
- 既存顧客からの注文を誰の担当にするか
- 新規問い合わせを営業に渡す条件
- 営業がECを使って見積り・提案できるか
- EC限定商品の扱いをどうするか
営業がECを使うメリットを感じられれば、社内導入は進みやすくなります。
商品情報が不足して問い合わせが減らない
EC化しても、商品情報が不足していると問い合わせは減りません。むしろ、商品ページを見た顧客から確認の電話やメールが増えることもあります。
卸売りECでは、一般消費者向けEC以上に、仕様や取引条件の情報が重要です。法人顧客は、購入前にロット、納期、サイズ、材質、対応用途、支払い条件などを確認します。
商品ページに必要な情報は、次のとおりです。
- 商品画像
- 仕様・サイズ・材質
- 入数・ロット
- 納期目安
- 在庫状況
- 使用条件
- よくある質問
- 関連商品
- 代替商品
- 見積り条件
問い合わせを減らしたいなら、商品登録を単なる掲載作業と考えず、営業資料をEC上に整備する取り組みとして進める必要があります。
物流・在庫連携が弱いと納期トラブルが起きる
ECで注文を受けられても、在庫や物流の連携が弱いと納期トラブルが起きます。特にメーカーの場合、在庫拠点、出荷単位、受注締め時間、欠品時の対応などを事前に決めておく必要があります。
在庫がない商品を受注してしまう、納期表示と実際の出荷日がずれる、EC注文だけ処理が遅れるといった状態になると、取引先の信頼を損ないます。
参入前に確認したい項目は、次のとおりです。
- 在庫情報をどの頻度で更新するか
- 欠品時に注文を受けるか
- 出荷可能日をどこまで表示するか
- 複数倉庫に対応するか
- 受注締め時間をどう表示するか
- 小口出荷に対応できるか
- 返品・交換条件をどう扱うか
ECは受注の入口ですが、顧客体験は出荷まで含めて評価されます。物流・在庫の設計を後回しにしないことが大切です。
メーカーのEC参入は3段階で進めるのがおすすめ
メーカーが卸売りECを始めるなら、既存商流の棚卸し、対象顧客と商品の絞り込み、受注データの活用という3段階で進めるのが現実的です。いきなり全社展開するより、小さく始めて改善する方が失敗を抑えられます。
特に初期段階では、ECサイトを完成させることよりも、どの条件なら既存チャネルと共存できるかを検証することが重要です。

Phase1:既存商流と取引条件を棚卸しする
最初に行うべきことは、既存商流と取引条件の棚卸しです。どの取引先に、どの商品を、どの価格で、どの方法で販売しているのかを整理します。
棚卸しすべき項目は、次のとおりです。
- 取引先の種類
- 卸先・代理店の販売エリア
- 商品カテゴリごとの販売先
- 掛率・価格条件
- 支払い条件
- 最小ロット
- 受注方法
- 物流条件
- 営業担当の役割
この整理を行うと、ECで扱える商品と、既存チャネルに残すべき商品が見えやすくなります。
Phase2:対象顧客と商品を絞って小さく立ち上げる
次に、対象顧客と商品を絞って小さく立ち上げます。最初からすべての法人顧客を対象にするのではなく、利用してもらいやすい顧客層から始めるのがよいでしょう。
初期対象として考えやすいのは、次のような顧客です。
- 既存取引先の中でもリピート注文が多い顧客
- 電話・FAX注文が多く、EC化の効果が出やすい顧客
- 小口注文が多い法人顧客
- 休眠顧客
- 新規問い合わせが多い商品カテゴリの顧客
小さく始めることで、価格表示や受注処理、問い合わせ対応の問題を早い段階で見つけられます。
Phase3:受注データを使って営業・販促へ広げる
ECで注文が入り始めたら、受注データを営業や販促に活用します。ECの価値は、受注をオンライン化するだけではありません。誰が、何を、どの頻度で購入しているかを見える化できる点にもあります。
活用できるデータは、次のとおりです。
- 購入頻度
- 購入商品の組み合わせ
- 離脱した顧客
- 再注文までの期間
- 閲覧されている商品
- 見積り依頼の内容
- クーポン利用状況
このデータを営業活動に戻せば、リピート促進、休眠顧客の掘り起こし、関連商品の提案につなげやすくなります。ECを単なる受注窓口ではなく、販路拡大の基盤として活用していきましょう。
まとめ:メーカーのEC参入は販路追加ではなく、商流設計から始める
メーカーのEC参入では、サイト構築より先に、既存卸や代理店とどう棲み分けるかを決めることが重要です。価格、商品、取引先、運用の条件を整理しておけば、ECを既存チャネルと競合させずに活用しやすくなります。
特に、価格は同じにしながら、おまけ・ポイント・クーポンでECの価値を見せる方法は、既存卸との衝突を避けるうえで有効な選択肢です。
まずは既存商流と取引条件を棚卸しし、ECで扱う商品・見せる価格・対象顧客を決めるところから始めてみてください。
EC部門を作る前に、まずは小さく販売を試す方法もあります。
メーカーがECに参入する場合、最初から自社でECサイトを構築し、商品登録、受注処理、出荷、問い合わせ対応まで内製化するのは負担が大きいことがあります。
特に、EC担当者がいない、楽天市場やYahoo!ショッピングに未参入、まずは少数の商品で需要を確認したいという場合は、販売代行を活用して小さく始める方法もあります。
売る倉庫では、商品をお預かりし、楽天市場・Yahoo!ショッピングでの販売、商品登録、受注処理、出荷対応、カスタマー対応までまとめて支援しています。
自社でEC部門を立ち上げる前に、まずは売れ筋商品やEC向きの商品から販売可能性を確認したいメーカー様は、一度ご相談ください。