第4回Well-Being教室を開催しました

第4回Well-Being教室を開催しました
【アンガーマネジメント:怒りと上手に付き合う技術】
〜幸せに健康に豊かに笑って働ける職場環境づくりのために〜
開催日時:2025年9月9日
講師:産業医・医師 佐野正行氏
佐野氏は名古屋大学医学部附属病院、国立がん研究センター中央病院などで3000件以上の手術に携わった経験から、職場での人間関係管理の重要性を深く理解。日本産業医協会会長、日本養生セルフケア協会会長として、心身の健康と組織のウェルビーイングを推進しています。
心地よく生きるための3つの基盤

職場や家庭で「心身が健全」な状態で生きるためには、何が必要でしょうか。佐野氏は、心身が不健全になる原因を以下のようにまとめています。
心身が不健全になる3つの原因
- 不幸せになる:人間関係の悪化、ハラスメント、いじめ、低収入など
- 不健康になる:心身へのストレス、生活習慣の乱れ、過重労働など
- 成長できない:存在価値がない、魅力的な人がいない、多様性を否定する環境など
では、「心身が健全」で生きるには?
しあわせに
健康に
豊かに
笑って生きる!!
多くの人が抱える3つの悩み
職場での実務的な課題と、個人の心の健康は密接に関連しています。
(1)仕事…お金
収入、キャリア、仕事の充実感に関する不安
(2)人間関係
職場や家庭での関係構築、ハラスメント、コミュニケーションの悩み
(3)健康
身体と心の疲れ、ストレス、睡眠、生活習慣
重要な気付き:特に(2)人間関係と(3)健康に関しては、「気軽に相談できる人がいない」「どうしていいか分からない」という感覚に陥りやすいため、組織レベルでのサポートが必要です。
ウェルビーイング(Well-Being)とは
職場での健康経営を実現するためのキーコンセプトが「ウェルビーイング」です。
Well-Being = しあわせで満たされた状態
ウェルビーイングは、3つの要素から構成されています。
1. 体:健康な身体と生活習慣
2. こころ:心理的な安定と充足感
3. 人間関係(環境):良好な対人関係と支持的な環境
重要なポイント:「好きになれない」「苦手」という感情があってもOKです。重要なのは、相手を尊重し、技術や知識を身に付けることで、より良い関係を築くスキルを取得することです。
マインドセット:思考が行動を変える
ウェルビーイングを実現するための基本的な考え方として、「マインドセット」(思考の枠組み)があります。
マインドセットの階層構造
- 意識(思考):しあわせ、健康、豊かになる思考
- 行動:セルフケア、相談、本物の知識を求める
- 結果:良好な体・こころ・人間関係
意識が変わると行動が変わり、行動が変わると結果が変わる
「思考の多様性」を理解する
職場でのトラブルや人間関係の摩擦は、しばしば「思考の違い」から生まれます。
「今の自分」になる原因
- 生きてきた環境(家族・学校・職場)
- 手本にした人
- 所属した場
- 受けた「伝染」や「洗脳」
→ 全ての人の思考は異なる
→ 多様性を尊重すること
常識は「自分の人生経験」に過ぎない
多くのトラブルの根底には「常識」の違いがあります。
常識の本質
- 常識 = 自分の今までの人生経験で育まれてきた価値観・知識
- 常識が必ず一番とは限らない
- 常識が間違っていることもある
- 常識 ≒ 自分の正しさ(→ 全員異なる)
相手の「常識」が違う場合、それを受け入れることが、職場の人間関係改善につながります。
怒りの感情:その本質と役割
「怒る」ことのメリットは何か?
医療現場の実例から、怒りの影響を考えてみます。
手術中のトラブル発生時
❌ パターン1:怒りながら対応する場合
- 「急がせる」「怒る」「怒鳴る」「急かす」
- 結果:ミスが重なり、時間がかかる
- 影響:医療スタッフに嫌われる・避けられる
✅ パターン2:落ち着いて対応する場合
- 「落ちついて対応」「改善策を伝える」(怒らない)
- 結果:スムーズに対応、早期解決
- 影響:医療スタッフに好かれる・協力してもらえる
→ 怒ってもいいことは何もない
怒ると何が起きるか
- 瞬間的な満足感(本当の解決ではない)
- 冷静さを完全に失う
- 行動の質が低下
- 人間関係が悪化
- 評判と評価が下がる
- 人間性が疑われる
- しあわせ度が低下
- 時間が無駄になる
- 相手は反発する
「短気は損気」「怒っても疲れるだけ」
では「怒り」は必要ない感情か?
実は、怒りは人間にとって大切な感情です。
怒りの本質
- 怒りは防衛感情:自分や大切なものを守ろうとする本能
- 基本的な4つの感情:喜怒哀楽(感情に良い・悪いはない)
- 心の支援機能:辛さ・痛み・悲しみなどを和らげてくれる
→ 怒りはゼロにはできない・取り除けない
アンガーマネジメント:怒りとの向き合い方
アンガーマネジメントの定義
Anger Management = 「怒り」の「管理・取り扱い」
「感情」の中で特にマイナスな結果を引き起こす原因となる『怒り』に正しく対処することで、「健全な人間関係」「しあわせな未来」を創る技術を取得すること。
重要なポイント
- 「怒りの感情」で後悔しないこと
- 「怒りの感情」はなくせないが、コントロール可能
- 「技術」であるため、正しく練習すれば誰でもできる(程度の差はあるが)
重要な気付き:怒りのコントロールは既にできている
実例:「社長に怒りますか?」
同じ事柄が起こっても、部下(立場が弱い人)には怒るけれど、社長(立場が強い人)には怒らない。
これは何を意味するか?
→ 怒りのコントロール(アンガーマネジメント)は皆できる!!
つまり、意識と選択の問題。多くの人は既にこのスキルを持っているが、それを職場全体で実践する文化がないだけです。
怒りが生まれる仕組み:3段階のプロセス

怒りをコントロールするために、まずは怒りが生まれるメカニズムを理解することが重要です。
「怒り」が生まれる3段階
(1)出来事に遭遇
客観的な事象が起こります
(2)出来事の意味づけ
「信じているもの・判断の基準(コアビリーフ)」と比較して意味づけします
→「許せない…」「納得できない…」という判断
(3)怒りの発生
「怒り衝動」と「怒り行動」が生まれます
※ この段階で切り離し可能
(4)怒り行動(自己選択)
怒りに従って行動するかしないかは、自分で選択できます
重要な気付き:「身体の反射反応」のように自動的に怒るのではなく、段階途中で「怒り衝動・行動」をコントロール可能です。
怒る理由:「…べき」という思い込み
多くの怒りは、「…べき」という自分の思い込みから生まれます。
「…べき」の問題点
- 一見正しく見える
- 実は「自分の思い込み」でしかないことが多い
- 根底にあるのは「価値観の違いを受け入れられない」こと
- 「なんで?!」という怒りが生じる
怒りの行動が生まれる4段階と対処法

アンガーマネジメントには、「短期的対策」と「長期的対策」があります。
「怒りの行動」が生まれる4段階と対処法
(1)出来事
↓
(2)意味づけ
【対処法】「思考(認識)」のコントロール
⇒ 長期的(根治療法)
↓
(3)怒り発生
【対処法】「衝動」のコントロール
⇒ 短期的(対症療法)
↓
(4)怒り行動
【対処法】「行動」のコントロール
⇒ 短期的(対症療法)
怒りに対する「行動修正」:タイムアウト戦略
怒りが湧いたときの実践的対処法は、「その場から離れる」ことです。
自らの退却戦略としてのタイムアウト
ステップ1:「タイムアウトをとる」と伝える
相手に対して、一時的に離れることを明確に伝えます
ステップ2:「再開する」ことを約束
その場からしばらく離れ、頭を冷やします
ステップ3:リラックスと気分転換
ゆっくり深呼吸し、リラックスします
※ 「怒りの出来事を思い出す」ことは絶対に禁止
ステップ4:五感(自然)を全力で感じる
新鮮な空気、緑、自然音など、五感で現在に意識を戻す
→ 前頭前野(脳)を活性化させる
怒った時のコミュニケーション
万が一、怒ってしまった場合のコミュニケーション方法も重要です。
怒りの後ろに「伝えたい気持ち」がある
重要なポイント
- 怒った場合でも、怒りをそのまま相手にぶつけない
- 怒っても、態度に怒りを出さなければ相手には伝わらない
- 「口に出した言葉」「目に見える行動」に相手は関心を持つ
実践的コミュニケーション
- 穏やか・丁寧・ゆったり伝える
- 不用意・不適切なことを言わない
- 一貫性のある基準・態度を保つ
「許せない」の3重丸:思考の柔軟性
アンガーマネジメントの長期的対策は、「許す」という思考の柔軟性を育むことです。
許容度を拡大する「3重丸モデル」
現在の状態:
- 許せる(最内側)
- まあ許せる(中間)
- 許せない(外側)
アンガーマネジメントの目標:
「まあ許せる」ゾーンを広げる!!
→ 「許せない」と感じる事柄を、段階的に「まあ許せる」に移動させることで、怒りの頻度と強度を低下させます
「べき」の程度は人によって異なる
多くの職場トラブルは、この「べき」の違いが原因です。
実例:部内会議の開始時間
Aさん:「会議は10分前に会場に集合すべき」
Bさん:「会議は10時ちょうどにいけばいい」
Cさん:「自分の部署の人が集まるから5分くらいの遅刻は許されるべき」
結果:同じ出来事について、「なんで?!」という怒りが生じる
対策:曖昧言葉(「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」)を避け、具体的で明確な基準を共有することで、「べき」の相違を減らします。
怒らないための実践的アプローチ
怒った場合でも、以下を心がける
- 大人・上司に伝える様に:感情的にならず、冷静に事実を伝える
- 知らないことは伝える(教える):相手が知らないだけかもしれない
- 受け入れてくれたら感謝する:「ありがとう!!」と心から感謝する
怒りと目的の関係
❌ 怒ったときの落とし穴
怒って…「自分の価値観」を押しつける
✅ 本来の目的を思い出す
目的 = 「しあわせな未来」を創る
短期的な満足感よりも、長期的な関係構築と組織の健全性を優先する
怒ってしまったら:謝罪と提案
謝る!!
誠心誠意、相手に謝罪します
その後:
穏やかに「未来がしあわせになる提案」をする
→ 怒りで終わるのではなく、建設的な解決策を示す
アンガーマネジメントのまとめ
重要な3つのポイント
① 「怒りの感情」をもつことはOK
感情そのものに良い・悪いはありません
② 「怒り衝動」と「怒った行動」は切り離せる
感情は自動的に生まれますが、行動は自分で選択できます
③ 「怒りにまかせた行動」は絶対に行わない!!
怒りを感じても、冷静な行動を選択することがアンガーマネジメント
醍醐倉庫への課題:Well-Being文化の実現
醍醐倉庫(株)らしく
「しあわせで、健康で、豊か」に笑って働く
重要な実践課題
◉「怒りにまかせた行動」は絶対に行わない!!
一人ひとりの選択と行動が、職場全体のウェルビーイングを実現します
怒りの感情は誰もが持つもの。
大切なのは、その感情と上手に付き合い、
冷静で建設的な行動を選択すること。
アンガーマネジメントは、個人の心身健康と
職場全体のウェルビーイングを実現するための技術です。
醍醐倉庫は全社でアンガーマネジメントを実践し、
「しあわせに、健康に、豊かに、笑って働ける会社」を目指します。







